継承したら、職員全員から退職届。
――そんなクリニックをどう立て直したのか?
父の代から続く地域密着型のクリニックを継承し、
「もっと患者さんにとって良い医療を提供したい」
そんな想いで、電子カルテの導入、新しい治療の開始、効率化のためのシステム投資など、次々と改革を進めた新院長。
――にもかかわらず、職員のほとんど全員から退職届が提出されるという、衝撃的な出来事が起こりました。
これは、実は非常によくあるケースです。
ここでは、ビバウェルが実際に支援した事例から、再生のプロセスを4つの視点でご紹介します。
1.職員の身にもなってください。
新院長は、「患者さんのために」と心から信じて改革を進めていました。
電子カルテの導入、新しい検査機器の導入、予約システムの整備――すべては“良くしよう”という想いからの行動です。
しかしその過程で、現場のスタッフとの対話が不足していたのです。
職員から見ると、
「なぜ急に今これを変えるのか、説明がない」
「今までやってきたやり方を否定されたようでつらい」
「次は何を求められるのか、自分はもう必要とされていないのでは?」
といった感情がじわじわと募っていきます。
現場は“変化そのもの”に反発しているのではありません。
「置き去りにされた」と感じたことに反発しているのです。
中には、「もっとこうすればいいのに」と思っていた職員もいたかもしれません。
でも、話す場がない、聞いてもらえない、相談できない――そんな状態で一方的に改革が進めば、不満や不安が怒りに変わります。
その結果が、ほぼ全員による“退職届”という意思表示だったのです。
2.どうすればよかったのだろうか?
本来、クリニックの改革は「独りでやるもの」ではありません。
いくら院長が正しい方向性を見ていても、それをスタッフと共有し、理解と納得を得ながら進めていくプロセスが不可欠です。
まず必要なのは、「なぜ変えるのか」「この改革は何のためか」を丁寧に言葉で伝えること。
そして、スタッフが持っている不安や疑問に耳を傾け、“一緒に考える姿勢”を見せることです。
また、制度や設備投資よりも大切なのが、“日々の関わり方”。
「相談された」「話を聞いてくれた」「自分たちもチームの一員だと感じた」――そうした経験の積み重ねが信頼を生みます。
この信頼がなければ、たとえどれだけ理にかなった正論でも、それは“押しつけ”と受け取られてしまうのです。
改革を成功させるには、まず“人の心”を動かすところから始めなければなりません。
3.事務長が必要です。
こうした局面で、院長とスタッフの間に立ち、双方の想いをすくい上げ、橋渡しをする存在。
それが「事務長」です。
職員の声を“ただの不満”として片付けず、正確に院長に伝える。
院長の意図や将来ビジョンを、現場の言葉でスタッフに伝える。
ときには“翻訳者”として、ときには“潤滑油”として、そしてときには院長を守る“盾”として立ち回ります。
事務長がいることで、院長がすべての調整・説明・フォローを1人で抱え込む必要がなくなります。
その分、院長は“クリニックの未来を描くこと”に集中できるのです。
こうした調整機能がなければ、現場に“誤解・不信・無関心”が広がり、組織は崩れてしまいます。
改革の成功には、“変化を現場とつなぐ人”=事務長の存在が不可欠です。
4.当社のとった解決法
このケースで、ビバウェルが最も重視したのは、「心理的安全性の確保」です。
クリニックにおける退職理由の多くは、突き詰めると「不安」にあります。
特に継承直後の大量退職は、新院長による急な改革が引き金になることが少なくありません。
今回のケースでも、スタッフは「これから何がどう変わってしまうのか」「自分たちのやってきたことは否定されるのでは」「私はもう不要なのでは」という漠然とした不安を抱えていたのです。
だからこそ、まず行ったのは**“不安の正体に向き合うこと”**でした。
私たちは院長に対し、まずこれまで長年クリニックを支えてくれた職員一人ひとりに対して、「感謝」と「過去への評価」をしっかりと言葉にして伝えてくださいとお願いしました。
そして、そのうえで、「これからのクリニックをどうしていきたいか」というビジョンを明確にし、無理のない範囲で、協力を得ながら進めていきたいというメッセージを、院長ご自身の言葉で伝えていただきました。
職員の不安を取り除くには、まず「予告」し、「説明」し、「承認を得てから進める」ことが重要です。
これによって、「知らない間に決まっていた」「聞いていない」という不信感を防ぐことができます。
こうしたプロセスを通じて、クリニックの中に徐々に**“安心して意見が言える空気”=心理的安全性**が生まれ、再びチームとして前を向ける環境が整いました。
結果として、数名の職員が退職を撤回し、新たなスタッフと共にビジョンに向かって進む新体制がスタートしました。
院長も「やっと診療に集中できるようになった」と語ってくださり、クリニックには再び活気と安定が戻ってきています。
本件に発生した料金は・・・
プラン | 提供内容 | 金額 |
ベーシックプラン | ・毎月2時間のオンライン会議 ・週1回の質問に48時間以内にチャットで回答 | 月額¥30,000ー |
本件では、ベーシックプランによるオンラインミーティングのみで対応しました。
初回は院長先生とのヒアリングを実施し、2回目では院長不在の状態でリーダークラスの職員とのヒアリングを行いました。
その後は、院長先生との月1回のオンラインミーティングに加え、リーダー職員との月1回のミーティングを継続しています。
職員を守ることは非常に大切ですが、それが最優先となり、改革のたびに「何も変えられない」状況になってしまうのは本末転倒です。
変化のたびに、「この選択をしたら誰かが辞めるかもしれない」といった“選べない選択肢”が増えてしまえば、院長の意思決定は大きく制限されてしまいます。
最終的に残るのは、“変化に対応できる人”です。
ですが、それは強引に切り捨てるということではありません。
重要なのは、急な感情的な離脱ではなく、対話を重ねた上で本人が納得し、前向きに次のステージに進んでいけるようなサポートを行うことです。
そのためにも、十分な余裕と丁寧なコミュニケーションの時間を確保することが必要不可欠だと考えています。
お困りの際は、どうぞご相談ください
もし、クリニック継承後の人間関係や、職員とのコミュニケーションに不安を感じている場合、
あるいは改革を進めたいけれどどう進めればよいかわからない――
そんな時は、ぜひビバウェルまでご相談ください。
現場と経営、どちらの立場も理解する支援者として、
対話と仕組みの両面から、持続可能な解決をご提案させていただきます。